その視界を彩るもの
第2章
/読者モデルと粧し込む
《ピピピピピピピピピピピピ》
―――――バシッ!
「………」
午前7時30分。場所は自宅、あたしの部屋。更に言うとベッドの上。
華麗なほど敏速なチョップを目覚まし時計相手に繰り出したあたしは、暫し布団の中で目を瞑って、それから。
「(起きるか)」
のそっ、と行動を始める。
今日は日曜日。従って学校には行かなくても良い。
するりとベッドから抜け出し、一階に下りて母親に挨拶。
未だ眠気を帯びた眼を洗面台で暫し凝視。人相悪いなあ。
バシャバシャと浴びるように顔を冷水で引き締め、むくみ対策。
デコルテ部分をほぐすようにマッサージしながら居間に戻れば、既に焼かれたトーストが顔を覗かせていた。
「初、あんた今日は?」
「んー……」
「ほら。シナモン」
「あー、うん。今日はマーガリンでいいや」
「珍しいわね」
首を捻りながらそう零す母親に欠伸で応えつつも、あたしの中ですらまだ確立していない今日のスケジュールについて思考を及ばせる。
アカネたちとの約束断った手前、あんまり目立った行動はできないかなあ。
ていうか、毎日のように学校でも一緒にいる癖によく飽きないよね。
あたしは……休日まではちょっと、勘弁だなあ。
括った前髪をゆらゆら揺らしながら、薄くマーガリンの乗せたトーストを口に運ぶ。
「ほら。コーヒー」
「あひがふぉ(ありがと)」
まず、どこ行くにしてもメイクはしなきゃでしょ。
だから食後は歯磨き、着替え、メイク、……まあ考えるのは後で良いかな。
アカネたちは十中八九渋谷に行くだろうから、そっち方面は避けよう。
リビングで光を放ち続ける休日特有の穏やかなテレビ番組を見詰めながら、そんなことを思う。