その視界を彩るもの
余程この話題には触れて欲しくないらしく、つんと外方を向いたイサゾーを言葉もなく見つめた。
まあ、いくら最初に比べて距離が縮まったからと言って。
イサゾーだって誰にも触れてほしく無い部分があって当然だろうし。
あたしだって―――…
「………、か」
『ん、なーに?』
「ううん、カフェオレまだかなーってね」
ジっとあたしの表情を窺うイサゾーには気付かれたくない負の部分。
あたしだって人間だし。そう言うのが少なからずあっても、可笑しくないよね?
「そうそう。イサゾーに聞きたいことあるって言ったじゃん」
だからあたしは、徹底的に隠すよ。
折角イサゾーと仲良くなれたのに幻滅されるのなんて嫌だから。
ごそごそと鞄を漁っていたあたしは、漸くお目当ての雑誌を引っ張り出してイサゾーの眼前に置く。
そしてパラパラと開いたそのページに書かれるのは、「ストリートスナップ!」というゴシック調の太文字。
「イサゾー、読者モデルやってたんだ?」
『………』
「ねえ」
返答がないことを疑問に思い、ふと顔を持ち上げたあたし。
視線の先で頬杖を突くイサゾーを見て、思わず目をしばたかせた。
「え。なに、照れてんの?」
だって、まさかそんなに赤い顔して不貞腐れてるなんて思わなかったから。