その視界を彩るもの
――――だからきっと、取り零したものなんて何一つとして無いように思えた。
でもそれはあたしの勝手気儘な早合点に過ぎなくて、詰まるところ大きなミスをおかしたことに気付くことが出来なかった。
「あっれー、あれ初じゃない?」
「あの子マジで男できてたんだー、先越された感否めなくて悲しーんですけどぉ」
「ていうか目的地変更なんて珍しいと思ったんだよね。
―――……アカネってば超面倒くさがりなのにねぇ?」
買い物にのめり込むあたしは、色んな表情を混ぜて言葉を交わすイサゾーとあたしを見つめる影に最後まで気付くことは無くて。
"あたし一人"の問題として処理できたら、別に何を思うこともない。
でももうきっと、既にイサゾーも巻き込まれていた。
それに気付くことができたら、あたしはどうしていたんだろう。
折角できた「友だち」の手を自ら離すことが出来ただろうか?
女って生き物は面倒だ。
イサゾーが『つまんない』と言ったことだって一理ある。
でもそれが一番当て嵌まるのは、他の誰でもなくあたしだったんだと思う。
イサゾーのためにイサゾーから離れるという選択肢を、持つことすら頑なに拒んだだろうから。