その視界を彩るもの
しかしながらその瞬間に上下したのは、紛れも無くユカリの肩で。
………動揺って言うの?それにしても露骨すぎると思う。
無意識の内に眉根を寄せてユカリに視点をおく。
そんなあたしをまるで遠ざけるように俯く彼女からは、いつもの快活さが感じられなくて。
「なんか、あったの?」
厭な予感がする。
普段通りに見えていたのは、もしかして。
……もしかして、あたしだけだったんじゃないかって。
――――と、そのとき。
「おはー」
ガラッと開いたのは教室の後ろ側に位置する扉で。登校時間のピークを終えた今、その大きめに響く音はクラスメイトの視線を集めるには充分だった。
それは勿論、ユカリとあたしにも当て嵌まること。
「………おはよ、アカネ」
様子が可笑しかったユカリを横目に捉えながら、その声の主に挨拶を返す。
ゆるりと微笑を浮かべたアカネ。今日もアップにまとめられた派手な髪はぐるぐると巻かれ、胸元からは煌びやかなアクセサリーが顔を出す。
幾ら校則がゆるいと言っても、限度があることは確かで。
アカネはあたしたち四人の中でも群を抜いて派手だ。と、思う。
だから廊下や職員室で先生の視線を受けたときは、多少とも必ず注意を受けている。
「初じゃーん!今日もやってんね。ポッキー貰ってい?」
「いいけど。テンション高くない?」
「えー、そうでもないと思うけど」
明らかに日頃に比べ上機嫌な彼女は、徹頭徹尾にそうこぼす。
だからあたしも「ふぅん」と返すに留めた。なにか裏があるんじゃないかって、思わなかった訳ではないけれど。