その視界を彩るもの
他愛ないやり取りを経由している内に、トイレに行っていたアキホも教室に戻ってきた。
まあ多分化粧したりスカート折ったりしてたんだろう。今日、寝坊したって言ってたから。
変わらない喧騒に身を置いていればSHRの時間を迎える。
そして姿を現した担任が教卓で声を張り上げるのを尻目に、窓際席のお陰で見ることのできる青空を頬杖を突きながらジっと見つめた。
そんなあたしの机の中にあるスマホ。サイレントに設定しているそれが緑色のランプを小刻みに点滅させ、イサゾーからの返信を告げていて。
イサゾーと出逢ってから既に数週間。
日数を跨げば跨ぐほど、あいつとの距離が縮まっていくのは当のあたしも感じていた。
今ではもう、最初のようにイサゾーが顔を顰めてあたしを見つめることは無い。
あたしたちが互いに抱える感情は「友情」だと信じて疑わなかった。
少なくとも、あたしは。女友達としてイサゾーと一緒に居られたらそれで十分だった。
そんなことを考え言葉もなく空を見つめていたあたしを、アカネがどんな感情を抱え見つめていたのかなんて知らずに。