その視界を彩るもの
そして辿りついた購買。
ここでも例に洩れず特別待遇のアカネ。避けるように道をつくった生徒たちの間を縫うように進み、ものの数分で目的のパンをゲットしたらしく。
まあ、特別待遇っていうか関わりたくないだけ、だろうけれど。
戻ってきた彼女の視線を受け、抗うこともせずその背に後続する。
購買から離れ、廊下に居る生徒の数が減ってきたところで再度その隣に肩を並べた。
「ちょっと寄り道してい?」
「いいけど……どこに?」
「んー、どこでもいいんだけど……」
振り向くアカネ。15センチ、メガサイズのカラコンの奥に潜む瞳孔があたしを見つめ、鋭利な光を帯びた気がした。
「二人になれるとこに行きたい」
「………やっぱ開いてないじゃん、ホラ」
「うわあマジかー。屋上がベストだと思ったんだけどなぁ」
「(普通開いてないと思うんだけど)」
鍵は先生の誰かが持っているだろうし。ドラマとかじゃ屋上でのシーンは外せないだろうけれど、現実問題そういう訳にはいかない。
まあ予測の範囲内。
当然諦めて教室に戻るだろうと踵を返したあたしだったけれど。
「じゃあいいや、ココで」
屋上に通じる通路のちょうど真ん中らへん。
特異な場所ともあってあたしたち以外に生徒は居ない。あたしの手首を掴んだアカネの体温がじわり、伝わってくるのを感じた。