その視界を彩るもの






そんな台詞を向けてくるものだから、首を捻ったあたしはもう一度。



「だから、シャワー借りてもいい?って。バスタオルも貸してくれたら助かる」

『寧ろタオル無しにどうしようってのよ。って、違う! 問題はそこじゃなくて、』

「あ、タオルこれ?使っていいの?」

『いいけど……って、ウイちょっと!』

「じゃ、シャワー借りまーす」





何やら背後で言葉を重ねるイサゾーを尻目に懸け、タオルとオイルを受け取ったあたしは浴室に直行。

だって寒い。やっぱり雨の中傘も差さないで歩くなんて、無謀だったのかも。

そんなことを延々と考えるあたしは、狭い居間でイサゾーが何を思っていたのかなんて知る由もなく。











『(絶対にアタシが男だって忘れてるでしょ……。普通男の家でシャワー浴びる!?)』












外の雨は、まだやまない。










< 64 / 309 >

この作品をシェア

pagetop