その視界を彩るもの
そんな台詞を向けてくるものだから、首を捻ったあたしはもう一度。
「だから、シャワー借りてもいい?って。バスタオルも貸してくれたら助かる」
『寧ろタオル無しにどうしようってのよ。って、違う! 問題はそこじゃなくて、』
「あ、タオルこれ?使っていいの?」
『いいけど……って、ウイちょっと!』
「じゃ、シャワー借りまーす」
何やら背後で言葉を重ねるイサゾーを尻目に懸け、タオルとオイルを受け取ったあたしは浴室に直行。
だって寒い。やっぱり雨の中傘も差さないで歩くなんて、無謀だったのかも。
そんなことを延々と考えるあたしは、狭い居間でイサゾーが何を思っていたのかなんて知る由もなく。
『(絶対にアタシが男だって忘れてるでしょ……。普通男の家でシャワー浴びる!?)』
外の雨は、まだやまない。