その視界を彩るもの
/切り取った夜空と情操
それはある平日の放課後。
最近比喩ではなく文字どおりにイサゾーの家に入り浸っていたあたしは、それと同時に「いつめん」からの誘いをとことん蔑ろにしていた訳で。
とうとう痺れを切らせたらしいユカリとアキホに、連行されて来たのがよく通っていた繁華街。
アカネは珍しく不在らしい。内心ほっとしたのも束の間、慌ただしく二人に腕を引かれるものだから思考の海に浸かる暇もない。
「ちょ、なんでそんなに急ぐの」
「だって放っておいたら初ってばすぐ居なくなりそうなんだもん!」
「あたしらがガッチリ押さえとかないと」
「………」
「あ!プリ撮ろープリ!!」
「えーでもアカネ居ないとマズくない?四人のときにしたほう良くね?」
「大丈夫だってー!落書きでアカネ描けば万事オーケー!!」
「マジそれ、ユカリ名案なんですけどー」
ぎゅうぎゅうぎゅうぎゅう。
押し込まれるように向かった先は、「最新」「美白」なんてPOP調の文字がこれ見よがしに踊るプリクラ機の中。
イサゾーと出逢う前までのあたしは、それこそ毎日と言っても過言では無いくらい。
こういうゲーセンで上っ面だけのダチとプリ撮って、遊んで。
「ほらー、初笑って!つーか笑え!笑わせてやる!」
「……や、やめっ、あはははははッ」
「いい笑顔ですねお嬢さーん?さて、あたしも参戦」
これが、本来のあたしの姿だったんだ、って。
脇腹を二人に擽られながら身を捩るあたしと、悪戯満載の笑みを湛えて両脇でピースまで決め込むユカリにアキホ。
こいつら盛り顔でプリ撮る気無いのかよ、なんて思っていれば当然の如く他のプリ機に連行され第二戦が開幕。
機械からポトリ、出てきたプリに写るあたしは、何だか違う自分に見えて不思議だった。