その視界を彩るもの
以前と同じようにゲーセンの中でたくさんの時間を過ごした。
あれから一度トイレで休憩という名のメイク直しを終えたあと、別の機械に入り込んで三回目のプリクラ撮影。
素朴な疑問なのだけれど、プリ機ってどれを見ても「最新」って書かれてない?まあ、どうでも良いんだけれど。
「やべー外した!ウチもう百円玉ないしー!アキホ両替プリーズ!」
「無理だってのー!あたし今超集中モード突入してっから!初プリーズ!」
「………、あたし?」
うげ、と露骨に表情を歪めるものの二人には関係ないらしく。
間髪を容れずに掴まされた野口氏二枚にすぐさま諦めの息を吐く。二人に関して言えばもう、目の前の獲物しか見ていないし。
「しょーがないなー、ちょっと待ってて」
ペッタンコの鞄を肩に掛け、あたしがそう言葉を残して去った少し後のこと。
UFOキャッチャーに熱中していた筈の二人は、互いに顔を見合わせて。
「ごめんね、…………初」
小刻みに震える手に握られたスマホが意味することなんて、当のあたしは露知らずに居た。