その視界を彩るもの
顔を歪めて視線をおとすあたしを見て、余程愉快だったらしい男たちは又もや下品な笑いを響かせる。
って言うかいくら何でもしつこ過ぎ。
周りに助けを求めようと視線だけ泳がせるものの、三人いる男たちに阻まれて不可能で。
向こうの様子が見えないってことは、あたしが男たちに囲まれていることに気付く人間も居ないのかもしれない。
そう実感して初めて、背筋を冷や汗に似た何かが滑り落ちていった。
「―――は、なしてッ」
「おいおい、それ抵抗のつもりですかァ?痛くも痒くもねぇんだけど」
「どうする?ココ出てすぐの路地にするか?」
「まーとりあえず人目に付かないトコで。騒がれても面倒だしな」
引きずられるようにして、強制的に足を動かされる。
ハッとして視線を上げると直ぐにわかった。こいつら、出口に向かっているんだ。
あたしが張り上げた声ですら、ゲーセンのけたたましい喧騒に呑まれてしまう。
痛いくらいに引っ張られる腕に抗うことも出来ない。
次第に狭まっていく視界は、これから迎えるであろう未来をこれ以上ないくらい露骨に示している気さえして。
だって、こいつら絶対に手慣れてる。
三人で来れば周りから隠すように移動だって出来るし、ゲーセンだと助けを乞う声ですら掻き消されてしまう。
―――気付けば、ゲーセンの自動ドアからあたしの半身が既に出ている状態で。
「ッ、たすけ………!」
最後のチャンスだと思った。
店から出た瞬間を狙って大声を出せば、一人くらいは気付いてくれると思った。
だけれど、すぐに口許を三人の内の誰かの手に覆われてしまう。
叫んだ筈のあたしの声は、そいつの手の中にちっぽけにも吸い込まれてしまった。