その視界を彩るもの
………お泊まり。
正直、マジで今はそんな気分になれないのだけれど。
家に連絡を入れるかは別として、ユカリとアキホに何の音沙汰も向けなかったことを思い出す。
イサゾーが拾ってきてくれたあたしの鞄。その底のほうに深く沈んだスマホを隻手で引っ張り上げ、目にするや否や視線を捉えた多種多様のランプに思わず声を上げそうになった。
《From. ユカリ》
"初どうしたの!?何かあったの!?
とにかく一度連絡下さい。まだゲーセンに居るよ"
《From. アキホ》
"初いまドコ!?ユカリからもメールいったと思うけど、ユカリもあたしも心配でしょうがないよ。
一回ゲーセンから出たけど、もしかして今家とか?電話して!"
《From. ユカリ》
"アキホの家わりと近いから、とりあえずウチらアキホんちで待機してるね。
何にも無かったら無かったでいいから、まず一回電話して!"
《From. アキホ》
"ねえ初、今ほんとドコなの?無事なの?
両替した野口氏失くしたとか?そんなんだったら全然気にしてないから連絡して!
充電切れとかだったらキレるよ!!"
嗚咽混じりの声を必死で押し込んだ。
あたしって、どうしようもないバカだ。だって、こんなにも必死になってくれる子たちを「上っ面だけ」とか「ダチじゃない」とか。
滲む視界を取っ払うことも出来なくて。
嬉しさとか苦しさとか、ただでさえめちゃめちゃだった感情が更に収拾つかなくなる。
指先が震える所為で、二人に返信を打つこともできない。
どうしようもなくて口許を覆って俯いていれば、戻ってきたイサゾーが勘違いしてしまったらしく。