その視界を彩るもの
/ボロアパートでお泊まり
「お邪魔しまーす」
『はいはい。いいから早く上がっちゃいなさい』
「ねえ、まだ靴脱いでない」
ぐいぐいと背後からイサゾーが押すもんだから、中腰の姿勢で前に突っ伏しそうになる。
あっぶな!思わず眼光鋭く奴を振り返るものの、飄々たる態度のイサゾー。……くっそー。
「ちょっとイサゾー、その荷物貸して。そんで前出て」
『はぁ?いいから早く入りなさいよ、アンタ』
訝しげな視線を送り付けてくるイサゾーを尻目に懸けた状態で、返答を待たずにその両腕から荷物全てを掻っ攫う。
それで間髪を容れずに奴の背後に回り込み、ニヤリと口角上げたあたしはと言うと。
「おら。早く入りやがれー」
『ちょッ、アンタ一体なんのつもりよ!!』
「いっつもゲシゲシ蹴られる仕返しですぅ。あたしだって蹴られたくて蹴られる訳じゃないんですぅ」
『それは中々上がらないアンタに非があるじゃない』
「(イラッ)」
思い切り眉根を寄せてあたしが蹴ったところをさすっているイサゾー。
怒っちゃった。初ちゃん怒っちゃいましたけど。
ぶつぶつ文句垂れているオカマの背中目掛けて、再度溜めこんだ蹴りをもう一発お見舞いしてやる。
『―――ッ、ちょっとウイ!!!!』
「知らなーい」
『こらぁああああァあッ』
本気で怒り心頭に発したらしいイサゾーが、両腕に荷物を抱えたあたしを容赦なしに追いかけてくる。
それを見て思わずギョッと目を見開くと、直ぐに荷物を居間に下ろしたあたしは。
――――バタン!
「シャワー浴びるから!もうシャツ脱いじゃったから!入ってきたら変態で通報するからー」
『……卑怯者めぇ……』
「はーん、どうとでも言いたまえ」