その視界を彩るもの
* * *
「"てんのよんばん"って、なに?」
小さな丸テーブルを挟んで向かいに腰を下ろしたイサゾーを見つめ、そうぽつりと疑問を落とした。
首を傾げて返答を待つ。そんなあたしの様子を認めるや否や、奴の眉間にはこれ見よがしに皺が刻まれていく。
あ、と思ったけれどもう遅くて。
と言うのも、あたしはてっきりイサゾーの機嫌を損ねてしまったのかと思っていたから。
しかしながら、視線を斜めに泳がせて思案に暮れるイサゾーを見て、それは見当違いだったことに気付く。
「イサゾー……?」
だって、その姿はまるで。答えようとはするものの、伝える方法に悩んでいるように思えたから。
『………アンタ、もしかしたらアタシとダチでいんのやめるって言うかもしれないわよ』
「は?何でよ」
『それくらい、衝撃受けちゃうと思う』
「……、……例えば?」
『たとっ、うーん……。難しいわね』
顎に細長い指先を添えて、呻りながら思考を巡らせるイサゾー。
ぶっちゃけ、あたしは別に何を言われてもイサゾーとダチでいることをやめない。
思う、なんて曖昧なことは言わない。だってもう、あたしの日常にイサゾーの存在は欠かせないから。
でも懸命に悩んでくれているのが少し嬉しかったから、敢えてそれは口にしないでおこうかなって。
『"天龍"って、聞いたことある?』
唐突に鼓膜を揺らしたのは、あたしに対するイサゾーのそんな問い掛けだった。
思わず目を見張って奴を見据える。
そんなあたしを目の当たりにして、思うことがあったらしいイサゾーがゴクリと息を呑みこんだ。
そしてあたしは、言葉を続ける。