その視界を彩るもの
至極真面目に先の台詞を告げたあたしに対し、稀に見るほどの茫然自失ぶりを披露したイサゾー。
10回鳩が鳴き終わるや否や、ハッと我に返ったらしい奴はテーブルに身を乗り出して。
『はァ!?アンタ一体どうなってんのよ!て言うか、じゃあさっき見せた表情は何!?』
「さっき……?なにそれ。イサゾーやってみてよ」
『無茶振りも大概にしろよこのアマ』
「なんでそこでキレんのー……!!」
だって本当に知らないんだから、しょうがないじゃないか。
ギン!と鋭い眼光であたしを射竦めたイサゾー。このままだと話自体を有耶無耶にされそうだったから、迫り立てられるように口を開いた。
「そ、その"てんりゅう"?と"てんのよんばん"が、何か関係あんの?」
『………』
「イサゾー」
『……』
「イサゾーちゃあん」
『キモいからやめて』
暫くの間無言を貫いていた奴だったけれど、あたしの余りのしつこさに呆気なく口を挿むに至る。
忠犬さながら返答待ちに徹する此方の様子をチラリ、流し目で捉えたイサゾー。
『………大アリよ。て言うかアンタ、なに?学校でイケてるグループに居るんじゃないの?』
「へ」
『なに、その間抜けなカオ』
「あたしイサゾーにそんなこと言ったっけ」
『単なる推測。容姿は派手だし授業中でもメッセ送ってくるし、そうなんじゃないかと思っただけ』
呆れてるのかな。
溜め息混じりに落とされた台詞を反芻するにつれて、何だか日頃の行いを咎められているように感じてしまう。
変なの。学校の先生に注意されても何にも思わないのに、イサゾーには良く見られたいとか。