その視界を彩るもの





イサゾーと居るときのあたしって、本当にいつもとキャラが違う。自分でも驚くくらい。

さっきの台詞の中に含まれていた《なんでばらしちゃったんだろ》って言葉。

イサゾーはもしかすると多少とも後悔しているのかもしれないけれど、もしもあのとき――ドラッグストアで初めて逢ったときのイサゾーが《普通の男》だったら、きっと今は無いと思う。

きっと、あたしだって今みたいに奴に纏わり付くことも無かった。





「あーあ、イサゾーがあのとき本性ばらしてくれてマジで良かったー」

『喧嘩売ってんのかこのアマ』

「えええ!売ってないっての、なんでキレんの……!!」





ギラリと眼光を尖らせて徐に立ち上がったイサゾー。

ひええ、身の危険を感じる!本能的に防御センサーの働いたあたしは直ぐさま腰を上げイサゾーからの逃亡をはかる。

でもまあ、こんなやり取りが楽しくて仕方ないんだって。何だか癪だから言わないけれど。




















イサゾーの誘いで決まった「お泊まり」は、二人で缶ビールを飲んで雑魚寝して終わりを迎えた。

未成年はお酒を飲んじゃ駄目だから真似はしないでね?


前髪を括って寝息をたてるあたしを暗闇で見つめていたイサゾーが言っていたことは、睡眠の世界に浸っていたあたしに伝わることは無かった。





『………まあ、イイ女だと思うわよ。アタシはね』







それは当のあたしですら忘れてしまっていた、今日始めの問い掛けへの答え。









< 95 / 309 >

この作品をシェア

pagetop