その視界を彩るもの
イサゾーと居るときのあたしって、本当にいつもとキャラが違う。自分でも驚くくらい。
さっきの台詞の中に含まれていた《なんでばらしちゃったんだろ》って言葉。
イサゾーはもしかすると多少とも後悔しているのかもしれないけれど、もしもあのとき――ドラッグストアで初めて逢ったときのイサゾーが《普通の男》だったら、きっと今は無いと思う。
きっと、あたしだって今みたいに奴に纏わり付くことも無かった。
「あーあ、イサゾーがあのとき本性ばらしてくれてマジで良かったー」
『喧嘩売ってんのかこのアマ』
「えええ!売ってないっての、なんでキレんの……!!」
ギラリと眼光を尖らせて徐に立ち上がったイサゾー。
ひええ、身の危険を感じる!本能的に防御センサーの働いたあたしは直ぐさま腰を上げイサゾーからの逃亡をはかる。
でもまあ、こんなやり取りが楽しくて仕方ないんだって。何だか癪だから言わないけれど。
イサゾーの誘いで決まった「お泊まり」は、二人で缶ビールを飲んで雑魚寝して終わりを迎えた。
未成年はお酒を飲んじゃ駄目だから真似はしないでね?
前髪を括って寝息をたてるあたしを暗闇で見つめていたイサゾーが言っていたことは、睡眠の世界に浸っていたあたしに伝わることは無かった。
『………まあ、イイ女だと思うわよ。アタシはね』
それは当のあたしですら忘れてしまっていた、今日始めの問い掛けへの答え。