その視界を彩るもの
――――そして放課後、正門前にて
「(……うわ……)」
予想通りと言ったら、それまでだけれど。
きゃっきゃきゃっきゃと埋め尽くされる黄色い歓声。と、"なにか"を中心に溢れ返らんばかりの女の子たちが群れをなしているその場所。
嫌な予感が冷や汗とともに増幅の一途をたどる。
イサゾーじゃありませんようにイサゾーじゃありませんようにイサゾーじゃありませんように……!
最早祈るように渦中のその場所をちらりと覗く。イサゾーじゃなければ、とっとと帰ろうと思っていた。
だってあのイサゾーだし。面倒臭がりの極みだし。
昼間に送り付けてきたあのメッセ内容だって、今になって気が変わっちゃってるかもしれないし。
そう思って直ぐにハッとして、カーディガンのポケットに忍ばせておいたスマホを取り出してアプリを起動させてみるものの。
最後に送られてきた「正門前で待ってて」という言葉だけが、これ見よがしに存在を主張してきていたから。
―――でも、でもさ。
着いたら普通連絡しない?……するよね、電話じゃなくてもメッセかメールは送るよね、普通。
だからその渦中に居る人はきっと違う男なんだろうと思った。
女なんじゃない?なんて馬鹿みたいなことは言わない。だって、これだけ女の子が集まっていればさすがにその線は薄いでしょ。
まあ芸能人が来たとか言うなら別、だけれど。
人垣からひょっこり頭を覗かせるようにして、視線を前へ。
しかしながら中々その姿を捉えることができない。時折叫ばれる嬌声に耳を澄まそうとしても、女の子たちの気迫が凄すぎて全く分からない。もはや恐怖である。
――――何気なく視線を再度渦中に投げ込んだ、その瞬間だった。