無愛想な同期の甘やかな恋情
クスクス笑う彼の前で、私はほんのちょっと唇を尖らせた。
そんな私に「ごめん」と軽い調子で謝ってから、穂高君は上目遣いに見つめてきた。


「冴島に気持ち晒して、なんだかいろいろと吹っ切れたせいかな」

「穂高く……」

「なあ。……冴島」


ドキドキと加速する胸に手を当て、なにを言うか決まらないまま呼びかけた私を、彼が短く遮った。


「俺、お前のためなら、なんだってしてやる。だからさ。俺のこと、好きになれよ」


一瞬、真剣な鋭い目をした彼に、私の胸がきゅんと鳴った。
咄嗟に返事ができずに口ごもると、穂高君は黙って肩を竦めた。


「……ゆっくりで、いいからさ」


それだけ言うと、私の返事を待つことなく、手元に目を伏せた。
照れ隠しなのか、やけにせかせかとスプーンを動かし始める。


私は、目が合わないように、微妙に目線をずらして穂高君を探っていた。
穂高君の言動に翻弄されて、限界を超えてドキドキと高鳴る自分の鼓動に戸惑っている。
だけどそれが、くすぐったくて嬉しくて……。
結局、彼が食事を終えるまで、一緒にいた。
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