無愛想な同期の甘やかな恋情
水曜日。午後三時に、ブランドの定例会議が終わった。
メンバーたちが、挨拶を交わしながら散会していく中。


「穂高君」


私は、穂高君に声をかけた。
彼は、いつもと同じように、人よりゆっくり資料を片付けて、椅子から立ち上がったところだった。


「ん?」


短く訊ね返してくれる穂高君の前に、駆け寄った。
彼は、顎を引いて私を見下ろしてくる。


「ごめん。企画の相談がしたくて」


私は、ちょっと肩肘張って、用件を伝える。


「いいよ」


穂高君は、クスッと笑って即答してくれた。
この間社食で、古谷さんのお願いを断った時とは違う、快い承諾。
穂高君が、私を特別に思ってくれているのが伝わってくる。


私の胸が、ドキッと弾んだ。
そしてすぐに、ジワジワと嬉しさが込み上げてくる。


「この後は、すぐ戻らなきゃならなくて。悪いけど、業後でもいいか?」


無意識に胸に手を当てる私の前で、彼は白衣の袖をちょんと摘まみ、左手首の腕時計に視線を落とした。
伏し目がちの目元。
なんてことない仕草なのに、私は一瞬、穂高君に見惚れてしまった。


「……? 冴島?」


返事が遅れた私に、彼が不思議そうに呼びかけてくる。
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