無愛想な同期の甘やかな恋情
黒い実験テーブルの上に荷物を置き、穂高君に勧められるがまま、私は丸椅子にドスッと腰を下ろした。
ここに来た用件も忘れて、ボーッと床の一点を見つめる私に、穂高君が焦れた様子で呼びかけてくる。


「……冴島」

「っ、え?」


ピクッと反応してから、私はハッとして顔を上げた。


「なに?って顔してないで。企画の相談に来たんじゃないのか?」


穂高君は呆れた口調でそう言って、鷹揚に腕組みをする。


「え? ……ああ、うん」


私は何度か首を縦に振って返事をしてから、テーブルの上に置いたバッグを自分の方に引っ張った。
中からA4サイズのクリアファイルを取り出し、それを穂高君に差し出す。


彼の言う通り。
昼間相談したいと言った、新企画の構想資料だ。
穂高君は私の前に立ったまま、一度ちらりと資料に目を落としてから、黙ってファイルを受け取ってくれた。


椅子には座らず、テーブルに腰掛け、長い足を持て余すように前に投げ出す。
ファイルから、左上をダブルクリップで止めた資料を取り出すと、無言で目を通し始めた。


穂高君の長い指がページを捲るたびに、カサッと音がする。
私は彼の指をぼんやりと眺めながら、先ほどの間中さんと糸山さんの姿を、脳裏に思い浮かべていた。
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