無愛想な同期の甘やかな恋情
さっき、穂高君も彼らを目にしたはずなのに。
彼はなにも言わずに、そこから私を連れ出した。
私が訊ねようとしても、かわしてはぐらかして。
事務所に寄らず、廊下を過ぎていった研究員たちの会話からも、なんとなく想像することはできる。
同じラボで働く人たちは、きっと私以上に、間中さんと糸山さんがさっきのように一緒にいる場面を見かけているのだろう。
陰で噂しながら、邪魔しないように気遣うのは、二人が付き合っているのかどうか、まだ微妙なところだから?
間中さんが前の彼女と別れたのは、今年の春先のことだと聞いた。
それを考えても、二人の関係が始まったのはここ最近のこと。
まさに、私が変化に気付いたのと、同じタイミングだと思って間違いない。
「っ……」
私は無意識にひくっと喉を鳴らし、膝の上でスカートを握りしめた。
手にした資料に目を伏せていた穂高君の視界に、私の手が動くのが映り込んだのだろうか。
彼は、私をちらりと横目で見遣った。
そして。
「……冴島」
資料から顔を上げて、私を呼ぶ。
彼の凛とした声は、ちゃんと私の耳にも届いたのに。
「冴島」
「っ……。は、はい」
彼はなにも言わずに、そこから私を連れ出した。
私が訊ねようとしても、かわしてはぐらかして。
事務所に寄らず、廊下を過ぎていった研究員たちの会話からも、なんとなく想像することはできる。
同じラボで働く人たちは、きっと私以上に、間中さんと糸山さんがさっきのように一緒にいる場面を見かけているのだろう。
陰で噂しながら、邪魔しないように気遣うのは、二人が付き合っているのかどうか、まだ微妙なところだから?
間中さんが前の彼女と別れたのは、今年の春先のことだと聞いた。
それを考えても、二人の関係が始まったのはここ最近のこと。
まさに、私が変化に気付いたのと、同じタイミングだと思って間違いない。
「っ……」
私は無意識にひくっと喉を鳴らし、膝の上でスカートを握りしめた。
手にした資料に目を伏せていた穂高君の視界に、私の手が動くのが映り込んだのだろうか。
彼は、私をちらりと横目で見遣った。
そして。
「……冴島」
資料から顔を上げて、私を呼ぶ。
彼の凛とした声は、ちゃんと私の耳にも届いたのに。
「冴島」
「っ……。は、はい」