無愛想な同期の甘やかな恋情
「穂高君、待って。あの……」

「でも」


穂高君は、私の呼びかけを短い一言で遮り、テーブルから腰を浮かせて立ち上がった。
白衣のポケットに両手を突っ込み、座ったままの私を見下ろす。


「らしくなく、ウジウジして見てるだけの期間、長すぎたんじゃないのか?」

「え?」


戸惑いながら聞き返す私の視線から逃げ、彼はそっぽを向いてしまう。


「……間中さんと、糸山さん」


わずかに逡巡するような間を置いて、穂高君がボソッと呟いた。
彼が口にした二人の名前に、私はビクッと肩を震わせて反応してしまう。
それを、視界の端で見ていたのか。


「最近、気付くとああやって二人でいるよ」


感情のこもらない抑揚のない声が、耳の鼓膜に直接刻み込まれる。
私の心臓が、ドクッと沸き立つような音を立てた。


咄嗟に、言葉を返せない。
絶句する私の反応を確認しようとしているのか、穂高君が再び目線を下ろした。


「接点が少なくて、後輩としか思われてないって言ってたっけ? 冴島が指咥えて見てる間に、日常的に接点のある二人は、当然のように惹かれ合っていった。そういうことだよ」

「ほ……だか、く」
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