無愛想な同期の甘やかな恋情
長い片想いの終着点を、強引に残酷に、目の前に突きつけられたせいか。
それとも、穂高君の、冷酷な言動に傷ついているのか。
私は、頭の中でも血管が脈動しているのを感じながら、激しく打ち鳴る胸元が痛くて、無意識にぎゅうっと握りしめた。


彼の名を呼んだ唇が、わなわなと震えてしまった。
穂高君が、私から顔を背ける。


「どうして、突然、そんな」


目に涙がじわっと浮かんでくる。
私は慌ててゴシゴシと手の甲で擦って、流れるのを止めた。


「……ごめん。嫌な言い方した」


穂高君はそれだけ言って、私にくるっと背を向けてしまう。


「間中さんとやりたい商品の相談しに来て、その上、目の前に俺がいるのも忘れて上の空になるほど、頭ん中、間中さんのことでいっぱいにしてる。そんなお前見てたら、柄にもなくむしゃくしゃした」

「っ」


穂高君はさらっと言うけれど、心の中は荒れ狂っている。
それを、目の前に突きつけられた気分になり、私はゴクッと唾を飲んだ。


「ごめんなさい」


よくわからない焦燥感に駆られて、私は彼を追って立ち上がっていた。


「でも、そんなつもりじゃなくて」


その場に立ち尽くし、背を向け続ける穂高君に、恐る恐る手を伸ばす。
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