無愛想な同期の甘やかな恋情
「え?」


穂高君が、きょとんと目を丸くして、ピタリと動きを止めた。


「だから、その……。きっといっぱいいっぱいになって、なにもできないと思うのね。穂高君が気持ちよくなれなかったら、ごめ……」

「……はあああ」


身を縮こませ、前もって宣言して謝罪する私を、穂高君の大きな溜め息が遮った。
そのまま、がっくりとこうべを垂れる彼に。


「えっ?」


私は戸惑ってわずかに上体を起こした。


「あの、穂高君……?」


恐る恐る呼びかけると。


「反則だろ……」


穂高君は口を手で覆い、半分以上顔を隠して、私から目を逸らした。
手の平に邪魔されてくぐもる声に、私は耳を傾ける。


「そういうのは、女が気にすることじゃないの」


穂高君は、なにか苦悶するように目を閉じ、もう一度お腹の底から息を吐いた。


「お前、美人で仕事デキるイイ女なのに。いい年してわりとリリカルだし、長いこと見てるだけの片想いしてるような弱虫だし」


なんのスイッチが入ったのか、なんだか早口で捲し立てる彼に、私はただ瞬きを繰り返す。
穂高君は口から離した手で、わりと乱暴にガシガシと頭を掻いた。
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