無愛想な同期の甘やかな恋情
穂高君は、私の背中にサッと腕を回し、かばうように支えてくれた。


「っ、ご、ごめん」


彼の肩口に額をぶつけた状態で、咄嗟に謝ったものの……。
不可抗力とはいえ、通勤電車で抱き合うような格好になってしまい、私の心臓はドッドッと激しく打ち始める。


混雑した車内で、周りの乗客は狭いスペースでスマホを操作したり、ゲームをしたり、はたまた立ったまた寝てる人もいる。
みんな自分に精一杯で、周りを気にする人なんかいないかもしれないけど。


今の私たちが、人の目にどんな風に映るか。
それを意識したら照れ臭くて、私は穂高君の視線から逃げ、顔を伏せた。


昨日までとは違う。
ただのコンビじゃない。


恋人に変わった穂高君は、私の想像以上に大きくて逞しくて、力強い。
頼もしいのにとびきり甘くて、私の鼓動を高鳴らせる。
穂高君をもっと好きになりたいと、強く願った時からずっと、ときめきは止まらない。


朝からいちいちきゅんとする自分が恥ずかしくて、私は穂高君の胸に両手を当て、彼のスーツをぎゅっと握った。
どさくさに紛れて、気付かれないようにしがみついた。
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