無愛想な同期の甘やかな恋情
顔も身体も火照っていて、頭のてっぺんから湯気が立ちそう。
焦った私は、無駄にキビキビと踵を返した。


今まで、なによりも仕事優先だった私が、なにを浮き足立ってるんだか。
自分に呆れ、パチパチと頬を叩いて叱咤するものの、やっぱり心が踊るのは抑えられない。
両手で頬を挟んで立ち止まり、「はあ」と息を吐いた。


――浮かれる自分も、許してあげたい。
この七年、私は恋を後回しにしてきたけど、もちろんしたくなかったわけじゃない。
一番大事なのは仕事だから、中途半端にしたくなくて、遠ざけていただけ。
でも、一緒に仕事をしている穂高君となら、顔を合わせる機会はたくさんあるし……。


「い、いやいや! だからって、仕事は仕事。業務中にどうこうとか、ないし!」


『仕事中も会えるから』なんて考えが過ぎった自分に、私はさらにツッコミを入れる。
それでも、オフィスラブの世界につきものの、社内であれこれ……なんて妄想が広がってくる。


朝っぱらから、なんてことを考えているの、私……。
らしくない、とんでもない妄想を掻き消そうと、頭の上で手を払った。
その時。


「おはようございます。朝からなにやってんですか? 美紅さん」


いきなり後ろから声をかけられ、私はビクッと身を震わせた。
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