無愛想な同期の甘やかな恋情
「えっ!?」


反射的に大きく振り返ると、そこに篠崎君が立っていた。
私の反応に驚いた様子で、ギョッと目を丸くしている。


「な、なんですか。その驚きよう……」

「あはは。ご、ごめん。おはよう、篠崎君」


私は慌てて取り繕って、白々しいほど乾いた笑い声をあげた。
私の挙動がよほど不審なのか、篠崎君はなにやら疑心に満ちた目で、じっとりと見遣ってくる。


「……ま、いいや」


だけど、ひょいと肩を竦めて、私の隣に並んで歩き出した。
彼に見られている間に、変な汗が背筋を伝っていた。
どうにか誤魔化せたようで、私は彼にバレないようにホッと胸を撫で下ろす。
手をヒラヒラさせて、火照った頬に風を送っていると。


「美紅さん、来月の企画会議、どうしますか?」


篠崎君が、私を見下ろして訊ねてきた。
オフィスに着く前からの仕事モード。
私の思考のスイッチを切り替えてくれる篠崎君に、地味に感謝する。


「今回は、準備不足」


シャキッと背筋を伸ばしてそう答えると、篠崎君が「へえ」とよくわからない反応を示した。


「そうなんですか。意外~」


別に私は毎回企画を挙げる常連じゃないけど、出すのが当然とでも思われているんだろうか。
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