無愛想な同期の甘やかな恋情
確かに、研究員は、普段から二十四時間裁量勤務制だけど。
私は、スマホを持ったままがっくりとうなだれた。


好きって言ったのは穂高君の方なのに、夏休みのお誘いをしてくれなかった理由が、ここにあった。
そりゃあ、穂高君はお仕事なんだもの。
誘ってくれなくて当然、当然!と、そこはホッとしたものの……。


『彼』がいる、久しぶりの夏休み。
一日も会えないなんて、寂しすぎる。
むしろ、仕事中の方が会いやすいとは、思わぬ誤算。


スマホを持ったまま、『うー……』と小さく唸ってしまう。
私の方ががっかりしているというこの状況、なんだかとても悔しくて堪らない。
すると、スマホから、彼がクスッと笑う声が聞こえてきた。


『美紅、水曜日は空いてる?』

「水曜? う、うん……?」


テーブルの上の卓上カレンダーに無意識に目を遣りながら、語尾を上げて返事をする。


『水曜なら半休取れる。午後からでよければ、デートしよう』

「……! うんっ」


ほしかった穂高君からの『お誘い』に、私はついつい弾んだ声で返してしまった。


そして、迎えた水曜日当日――。


「……美紅。重い」


私の背中で、穂高君が顕微鏡を覗いたまま呟いた。
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