無愛想な同期の甘やかな恋情
「なんでそんな、可愛いヤキモチ妬くの。美紅のやることなすこと、全部直球でクルんだけど」


穂高君は、端整な顔を真っ赤にして目を逸らす。


「え、っと。……あ」


彼のこめかみに、もう一粒汗が伝うのを見て、私はバッグからハンカチを取り出した。
恐る恐る手を伸ばし、彼の頬にそっと当てる。
穂高君は一瞬ビクッと身を竦ませた後、ちらっと私に視線を向けた。


「……サンキュ」


短い謝辞だけで、拒否はない。
だから私も黙って頷き返し、腕を伸ばして彼の額の汗を拭った。


拭き終わる頃には、穂高君の呼吸もすっかり整っていた。
彼は、私の手から、ハンカチをスッと抜き取っていく。


「ごめん。洗って返す」

「え。そんな、わざわざいいよ」

「よくない」


彼はそう言って、Tシャツの上から着ているサマージャケットのポケットに、私のハンカチをねじ込む。
そして、姿勢よくピンと背筋を伸ばした。


「え~と。気を取り直して」


そんな前置きをしてから、一度すうっと大きく息を吸い込む。


「美紅、改めて。これから、俺とデートしてください」


言葉通り改まって、真剣な目をして誘ってくれる穂高君に、私の胸はきゅんと疼く。


「でも、菌……」
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