無愛想な同期の甘やかな恋情
さらっと言われて、私の心臓がドキンと跳ねた。
穂高君が、カアッと頬を染めて俯く私の頭に腕を回して、抱き寄せる。


「この間……」


小さく、やや掠れた呟きが耳をくすぐる。
先を促すつもりで、私は目線を上げた。


「この間、美紅に聞かれたこと。俺が、いつからお前のこと好きだったか、って」


そういう形に動く、彼の唇を見つめる。


「う、うん?」


ゆっくりと加速し始める心臓の拍動を意識して、私は無意識に胸に手を当てた。


「好きになったのは、一緒に仕事するようになってからだけど。入社前から、お前のこと知ってたって言ったら、驚く?」

「……えっ!?」


語尾が上がった質問に、私はたっぷり一拍分の間を置いてから、ギョッとしてひっくり返った声をあげた。
私の反応に、穂高君も「はは」と乾いた笑い声を漏らす。


「え? 入社前? 本当に? なんで?」


私は思わずベッドに手を突き、わずかに上体を起こした。
短い質問ばかり畳みかける私に、彼は軽く目線を上げて、「うん」と頷く。


「前に話したろ? 俺、就活で面接の前までは、なんで俺が化粧品なんか、って思ってた」

「あ、う、うん」


私は、穂高君がその話をしてくれた時のことを脳裏に浮かべながら、相槌を打ってみせた。
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