無愛想な同期の甘やかな恋情
夏季休暇が終わり、まだまだ酷暑が続く中、私にはいつもの日常が戻ってきた。
自分の通常業務をこなしながら、篠崎君の企画の準備を手伝う。
休みボケなんかしていられないくらい、ハードだ。


それでも……。
水曜日の定例ブランド会議で、穂高君の姿を目にするだけで、胸が弾む。
会議中に目が合い、ふっと微笑みかけてもらうだけで心拍が上がり、元気をもらえる。


この会社に入ってから、仕事一筋で突っ走ってきた私が知らずにいた、甘やかな恋情。
ものすごくくすぐったいけど、仕事とは別の幸せをくれるこの感情を、私は大事にしたいと思っていた。


休暇が明けて二週目。
この夏、東京に酷暑をもたらした太陽が、幾分威力を失い始めた、八月下旬。
隔月開催の企画会議の日を迎えた。


私は発表者じゃないから、緊張で頬を紅潮させた篠崎君を見送り、オフィスで仕事をしていた。
時々息をつきながら時間を気にして、何度も左手首の腕時計に目を落とした。
そうやって、自分が発表する時以上にそわそわして、篠崎君が戻ってくるのを待っていた。
そして――。


「美紅さんっ……!!」


会議が始まってから二時間後、篠崎君が私の名を叫びながらオフィスに駆け込んできた。
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