無愛想な同期の甘やかな恋情
篠崎君がなにを言っているのか、瞬時にのみ込めない。
戸惑って、何度も瞬きを返す私に、彼が大きく一歩踏み込んできた。


「美紅さんが、穂高さんに『難しい』って言われて諦めた企画。古谷さんは、穂高さんから助言してもらったって胸を張って、自信満々でプレゼンしたんです!」

「え……?」


興奮して声を荒らげる篠崎君の言葉は、私にはやっぱりまっすぐ入ってこない。
その意味をしっかり理解するのに、時間がかかった。
おかげで、なんの反応もできずにいると。


「言っときますけど、盗んだなんて思わないでくださいね」


篠崎君の後ろから、静かな低い声が聞こえた。
私が反応するより早く、篠崎君が勢いよく振り返る。
彼の後ろに、腕組みをした古谷さんの姿を見つけて、私は反射的に椅子から立ち上がっていた。


「私も、男性用基礎化粧品の展開を、ずっと考えてたんです」


私が呆然としてなにも言えずにいる中で、古谷さんは篠崎君を回り込んで進んできた。
そして、私の目の前で両足を揃え、ピタリと立ち止まる。


「穂高さんに相談したかったので、彼に指示された通り、ラボの集合アドレスにメールをしました。そしたら、穂高さんはちゃんと目を通してくれて、返事をくれたんです」

「え……?」
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