無愛想な同期の甘やかな恋情
その日、業務を終えた後、私はまっすぐ別棟に向かった。
いつものように、受付で穂高君への取り次ぎをお願いしたけど、彼の指示は待たず、警備員に『事務所で待ってます』と告げて、ラボに入った。


躊躇うことなく、事務所に進む。
ドア口から「こんばんは」と声をかけてから、室内に足を踏み入れた。


「あ、こんばんは、美紅さん!」


糸山さんが、明るく挨拶を返してくれた。
彼女はもう仕事は終わっているようで、デスクも綺麗に片付いている。
糸山さんの隣には、いつかのように、間中さんが座っていた。


「こんばんは、冴島さん」


私が二人の関係をすでに知っているせいか、間中さんも慌てる様子はない。
休憩に来た彼と、帰宅前に一緒にコーヒーブレイク。
糸山さんはそんな感じで、二人からは和やかな空気が漂っている。


二人に当てられて、私の心も一瞬和みそうになる。
でも、今日ここに来た目的を考えると、ほっこりしてる場合ではない。
私は二人に軽く頭を下げた。


「すみません。穂高君に会いに来ました。中で待たせてもらっていいですか?」


やや硬い声でそう告げると、糸山さんが小首を傾げてから、「どうぞどうぞ~」と立ち上がる。
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