無愛想な同期の甘やかな恋情
「穂高君が、私には『原料面でハードルが高い』って言った、メンズ物の企画。古谷さんが、穂高君と『二人三脚で挙げた』って」

「……っ!?」


それほど多くの言葉を紡いでいないのに、穂高君は、私が意図したことを鋭く察したようだ。
彼は小さく息をのみ、大きく目を瞠る。


「冴島、それ……」

「彼女、自分も男性用基礎化粧品のブランド展開を考えてて、盗んだんじゃないって」


私は逸る気持ちを抑えられず、彼の呼びかけを遮って早口で捲し立てる。


「検証データを送ってあげたんでしょ? 古谷さん、穂高君に『新しい力が育つのを応援したいから、頑張って』って言ってもらったって。その後も、親身になって相談にのってくれたって」


畳みかけて言い切り、私はハッと浅い息を吐いた。


「……彼女が企画会議で出した検証データ、穂高君が私にくれたのと同じものだった。でも、私は企画挙げるのを止められた。穂高君、後輩に任せろって、そう言ったよね?」


凍りついたように立ち尽くす穂高君から目を逸らし、自嘲気味に呟く。


「企画会議で、アイデアが被ることなんかざらだもの。自分の企画として通らなくても、商品化されて会社の業績に貢献できるなら、私はそれで構わない。穂高君が言うように、新しい力を育てるのも必要なこと。でも……」
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