無愛想な同期の甘やかな恋情
やるせない思いが胸に込み上げ、思わず声が詰まった。
新しい才能が開花するのを応援して、穂高君が古谷さんに協力したのなら、納得できるし理解もできる。
だけど……。


「どうして……? 一言でいいのに、どうして言ってくれなかったの」


穂高君が答えてくれないから、私の心も逆撫でされる。
否定してくれないから、信じたいのに疑惑ばかりが強まる。
そのせいで、一方的に詰るような言い方になってしまったのは、否めない。


「諦めないって、言ったのに。私は、穂高君と一から新しいブランドを起ち上げたくて、あの企画を諦めたくなかったの!!」


感情のまま、後先も考えずに、私は絞り出すような声を放っていた。
穂高君が息をのんだのか、ひゅっと喉を鳴らしたのが聞こえた。
私は、一度ゴクッと唾を飲んで、気が昂った自分を必死に抑えようとする。


「……ねえ、穂高君。どうして黙ってるの? 違うなら違うって言ってほしいし、穂高君なりにもっとなにか考えがあったのなら、話してほしい」


激しい焦燥感に駆られ、私は縋るように彼の両腕を掴んだ。
それでも、穂高君は私と目を合わせるのを避けるように、ふっと顔を背けてしまう。
そんな彼に、私の信頼が、ガラガラと崩れ落ちる音を聞いた気がした。
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