無愛想な同期の甘やかな恋情
穂高君を窘めるように言ううちに、間中さんの声色も徐々に厳しさを増していく。
それでも穂高君が黙ったままだから、間中さんが苦し気に顔を歪めた。


「相棒のお前が、冴島さんを裏切ってどうするんだよ。どれだけ彼女を傷つけるか、わからなかったわけじゃないだろうが……」


感情を吐露して震える彼の声が、私の心を深く抉った。


「……酷い……」


もうなにも冷静に考えられず、私は掠れた声で呟いた。
それを聞き拾った穂高君が、弾かれたように私に顔を向ける。


「冴島、俺は」

「最低……! もう、穂高君なんか、信じられない!」


彼がなにか言いかけるのを最後まで聞かず、張り裂けそうな声で叫んだ。
穂高君が、大きく目を見開き、絶句した。


「っ、冴島さん」


なにも言えない穂高君の代わりに、間中さんが取りなすように私に呼びかけてくる。


「君も、落ち着け。ちゃんと冷静になってから、改めて話を……」


間中さんが肩に置いた手を振り払い、私はその横を擦り抜けた。


「あ、冴島さ……」


焦った声で私を呼ぶ間中さんを振り返ることなく、バタバタと走り抜け、事務所から飛び出した。
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