無愛想な同期の甘やかな恋情
「いえ。もう、そのことは……」


私は少し硬い声でそう言った。
一瞬頭に浮かんだ、穂高君の凍りついたような顔を振り払おうと、ブンと首を横に振る。


「それで、今日は、あの……」


そこでやっと用件を伺うことができた。
間中さんも、『ああ』と応じてくれる。


『実は、その件にも関係して。会って話したいんだ。急で悪いけど、今日どこかで時間取れないかな』

「え。きょ、今日ですか?」


私はPHSを肩と耳で挟んで両手を空けてから、パソコンのロックを解除した。
マウスを操作して、これからのスケジュールを確認する。


「あ。四時過ぎから三十分ほどなら大丈夫です」


スケジュールの空きを見つけて答えると、『OK』と返事が聞こえた。


『それなら、こちらから本社の方に出向くので、よろしく』


その言葉通り、間中さんは四時に私を訪ねてきた。
どんな話になるのかわからなかったから、フロアの片隅の打ち合わせスペースではなく、小会議室を予約しておいた。
私が小会議室のドアをノックすると、先に来ていた間中さんが「はい」と応えるのが聞こえた。


「失礼します」


そう断ってから中に入る。
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