無愛想な同期の甘やかな恋情
間中さんが、私を遮った。
その言葉に、私は思わずゴクッと唾を飲む。


「は、はい」

「その時、俺は、君にこう指示したと思う。『詳細を、ラボの集合アドレスに送ってくれ』と」

「っ、はい。そうです。それで……」


私は無意識に腰を浮かせながら、間中さんに返事をした。
彼が目線を上げて、私を見据える。


「君には、俺から返事がいった。だから俺が協力したとばかり、思ってくれたんだろうけど」


間中さんはそう言って、私の前に一枚の用紙をスッと差し出してきた。
私はそれに目を落とし、「え?」と声を漏らす。


「古いものなので、探すのも結構難儀だったんだが……。これが、『俺』が君に返したメールだ」

「……! そうです。間中さんは、とても丁寧な報告書を添付してくれて……」


ついつい声が上擦ってしまう私に、


「冴島さん。よく見て」


間中さんが、とある一部分を指で示した。


「え?」


視線を導かれ、そこを見つめる。
それは、差出人のメールアドレス欄だった。


「……あ」

「ラボの集合アドレスに届いたメールは、グループ全員、見ることができるんだ。ブランドチームが結成されている案件なら、担当研究主任と直接やり取りしてもらうけど、そうじゃない案件の場合は、このアドレスに誘導する」
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