無愛想な同期の甘やかな恋情
カッと頬を染めて、モゴモゴと言い淀む堀田さんを見て、それまで腕組みして彼の説明を聞いていた間中さんが、ふっと口角を上げた。


「集合アドレス宛てのメールでも、特定の研究員を名指しして送ってくる人もいる。そして、そういう人の気持ちを変に気遣う研究員が、なぜかうちには二人もいてね」

「え?」


私は間中さんに聞き返した。
すると彼は、顔を真っ赤にして俯いている堀田さんをくくっと笑ってから、ちょっと意地悪に細めた目を私に向けてくる。


「冴島さん、わからない? もちろん歩武は、あの夜君に詰られた時、この事態の真相にちゃんと気付いていたはずだ。古谷さんにメールを返して協力していたのは、自分じゃない。堀田が歩武の名を語ってやり取りしてるんだってこと」

「は、い……」

「なのに、それを君に説明しようとしなかった。それは、どうしてだと思う?」

「………」


探るように質問を畳みかけられ、私は答えを探して視線を彷徨わせた。
その答えは、はっきりと頭の中に浮かんでは来ないのに。


「……っ」


なぜだか、心臓がドキドキと拍動を強め、頬が火照り始めた。
頭じゃなく、心と身体が先に答えに行き着いた。
そんな気がして、気持ちが逸るのを抑えられなかった。
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