無愛想な同期の甘やかな恋情
「……研究者だから? 人の行動を観察して分析するのも、時には面白いというか」

「穂高君らしくない言い訳しないで。そもそも穂高君、私の行動なんか興味ないでしょ」


特に反論もないのか、黙り込んだ穂高君の前で、私はがっくりとこうべを垂れた。
そして、一度自分を奮い立たせてから、グッと顔を上げる。


「あの……言わないでね」

「言うかよ。ガキじゃあるまいし」


穂高君は、『心外だ』と言いたげに眉根を寄せて、私に即答した。
それでも、はっきりと言質を取ったことにホッと胸を撫で下ろす私を、じっとりとした目で見下ろしている。


「……結構、前から」

「え?」


頭上から、ボソッとした声が降ってきて、私は聞き返しながら首を傾げた。


「冴島が、結構前から間中さんに片想いしてるの、俺、知ってた」

「っ……」

「お前、企画のプレゼンしてる時は『綺麗でデキるお姉さん』って感じで、ウジウジ片想いを続けるタイプじゃないのに。なんで、言わないの?」


穂高君は真顔で、いつも以上に感情のこもらない単調な言い方で訊ねてきた。
その中の『綺麗でデキるお姉さん』という言葉をしっかり聞き拾って、私は不覚にもドキッとしてしまったけれど。


「は、ははっ」


照れ隠しに乾いた笑い声をあげて、こめかみを指でポリッと掻いた。
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