無愛想な同期の甘やかな恋情
「間中さん、長い付き合いの彼女がいるって、知ってたから」

「春先に、別れたってよ」

「……それも、知ってるけど」


そこで言葉を切った私に先を促すように、穂高君が軽く顎先を上げる。


「私、接点が少なすぎて。ただの『後輩』としか思われてないの、わかるから……」

「自信なくて、言えないんだ? へえ。冴島って、結構面倒くせえ……」


言葉通り、本当に鬱陶しそうに言われて、私もムッとして唇を尖らせる。


「自信ないわよ。って言うか、告白するのに『自信たっぷりです!』って、いったいどんな女なの」

「確かに。それもそっか」


穂高君は、抑揚のない声でさらりと同意して、顎を撫でながらなにか思案している。


「そういう穂高君は、どうなの?」

「え?」

「私のこと面倒くせえって茶化すくらいなら、相当恋愛に自信あるんでしょ?」


ちょっと意地悪な気分になって、腕組みしながら探りかける。


「穂高君、私には無愛想だけど、なかなかのイケメンだし。本気で狙えば、女の子は百発百中とか」

「なにが言いたい?」

「恋のスナイパー♪ うわあ。そりゃあ、私のことも『ウジウジ』なんて簡単に言ってくれるか~」

「……はあ?」


彼はたっぷり一拍分の間を置いた後、顎から手を離しながら、珍しく裏返った声で聞き返してきた。
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