無愛想な同期の甘やかな恋情
「でも、絶対ですよ。美紅さんが企画して、穂高(ほだか)さんが開発した商品は、大ヒット間違いなしですから!」


背凭れに腕をのせて、大きくこちらを振り返っている篠崎君が、窓ガラスに映り込む。


「先シーズンの『AQUA SILK』ブランド商品の売上も、過去最高を記録。ヒット商品を連発する、社内一の名コンビ! 社長からの覚えも目出度い、全社員の誇りです」


鼻息荒く熱弁する彼に、ちょっと困ってひょいと肩を竦めた。


「会社の宝の二人が同期だっていうから、それだけで二年上の先輩たちみんな、神様みたいに思えます。俺」

「……だから、もう。褒め過ぎだって」


身体の向きを変えて窘めると、篠崎君は少年っぽく「てへ」と舌を出した。


「だって。今月の社内報に二人のインタビュー記事、載ってたじゃないですか。『冴島さんが企画する商品はどれも丁寧で繊細で、彼女の意に適うクオリティに仕上げるのは本当に難しい。だからこそ、研究者としての意地で、やってやろうって思う。冴島さんとの仕事は、研究を進める上で、大きなモチベーションとなってくれています』。俺、穂高さんのその記事読んで、ほんと尊敬して、感動したんですよ」


篠崎君が朗々と暗唱したその記事の一文は、初めて読んだ時、私もドキッとしたものだった。
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