無愛想な同期の甘やかな恋情
チームメンバーはほぼ揃っているけれど、穂高君はいない。


「あ。穂高さんなら、ちょっと遅くなるそうですよ」


私の視線に気付いたのか、新井さんが先回りして教えてくれた。
見抜かれたことにドキッとしながら、私はほんのちょっと苦笑する。


「穂高君、いないなって思ったの、バレた?」


穂高君に、秘密の片想いを見抜かれてから、自分で思う以上に思考が顔に出てるんじゃないか……と、意識するようになってしまった。
だから今も、新井さんにバレてしまったのかと、確認しておきたかった。


けれど彼女はクスッと笑って、「いいえ?」と語尾を上げる。


「チームの飲み会で美紅さんが探す人は、穂高さんしかいないでしょ、って」

「………」


特に気にした様子もなくさらっと言われて、私はかえって難しい気分に陥った。


これは『コンビ』という刷り込み効果?
チームの飲み会では、穂高君と隣り合わせで座ったことはほとんどないのに。
私がいつも、彼を気にしていると思われてる気がする。
私は気恥ずかしくなって、無言で彼女から目を逸らした。


やがて定刻を迎えて、祝賀会は穂高君不在のまま、乾杯となった。
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