無愛想な同期の甘やかな恋情
「な、なに、今の。きゅんって!!」


一人ジタバタして、上体を起こしていられなくなり、フローリングの床にゴツンと額をぶつけた。
心臓は、ドッドッと太鼓の乱れ打ちのような音を立てている。


なんで。
なにがどうして、穂高君とキスしちゃったんだっけ!?
私は、床に額を預けたまま、意味もなくぐしゃぐしゃと髪を掻き回した。


穂高君が巻き込まれる形で、私を送ってくれたことは、ちゃんと覚えてる。
でも、その間なにを話したとか、そのディテールは思い出せない。


なんだっけ。なんだっけ、と、脳を絞り出す勢いで、私は必死に昨夜の記憶を辿った。
そして――。


『俺は、お前との間に、中途半端は必要ない。今が不満なら、男と女。……それでいい?』

「……!!」


彼の言葉が、やけにリアルに脳裏に浮かんだのは、記憶ではなく鼓膜に刻み込まれていたからかもしれない。


穂高君をつれない! 素っ気ない! もっと仲良くしたい!……と罵った私に、彼はそう言っていきなりキスを仕掛けてきて……。


「ど、どういう意味よ!?」


見なくてもわかる。
私の顔、今は紅玉リンゴも真っ青なほど、真っ赤に染まってるはずだ。
だって、ありえないくらい頬が熱い。
手を触れたら、ジュッと音を立てて火傷しそうだと思えてしまうくらい。
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