無愛想な同期の甘やかな恋情
『AQUA SILK』も、今や我が社の主力ブランドに成長した。
一緒に社長表彰を何度も受けたりして、篠崎君の言う通り、私たちは社内でも有名な『名コンビ』だ。


同期というのも煽りになって、仲良しで息ぴったりだと、勝手なイメージで見られているのは、自覚している。
みんなの期待を裏切りたくなくて、それは敢えて否定せずに流してしまっているけれど……。


脳裏に描いた穂高君は、私に、切れ長で涼やかな目を向けている。
笑うとその少し吊り気味の目尻が優しく下がるのを知っているけれど、彼は私の前ではいつもあまり表情を変えない。
素っ気なく感じるほどの、ポーカーフェイス。


たまたま最初がヒットしたというだけで、いつまでも私と『名コンビ』なんて言われて、迷惑してるんじゃないか。
もう長いこと一緒に仕事をしているわりに、距離感は変わらず、いつも余所余所しく感じる。
もしかして嫌われてるのかな、と思うこともある。


それでも、彼と一緒に手掛けた商品の売れ行きは鰻上り。
絶対的に満足度の高い商品を生み出せる彼と、私はずっと仕事を続けたい。


穂高君は、私の最高の相棒。
今のままでいいから、穂高君との関係をこじらせたくない。
私は彼との間に引かれた一線の手前で、それ以上踏み込めずにいる。
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