無愛想な同期の甘やかな恋情
覚えてないフリ
そうして迎えた水曜日。
私はあえて会議開始ギリギリになってから、中会議室に向かった。
エレベーターを二十五階で降り、大小様々の会議室が並ぶ通路を折れ、一番奥まったところにある中会議室。
まだ始まっていないからか、大きくドアが開け放たれているのが見える。
近付くにつれて、私の歩みはさらにのろのろとしたものになる。
会議室に入る前に、私は一度足を止めた。
そっと顔を覗かせ、中を窺う。
ここからじゃ、室内全体は視界に入らない。
穂高君がもう来ているかどうか、確認できない。
……いや、なにを探ってるんだろう。
私は一度ドア口から離れ、会議室の壁に背を預けた。
私は時間ギリギリに来たのだから、彼は中にいるに決まってる。
私が入れば、会議はすぐに始まる。
終わった後も急いでオフィスに戻れば、きっと会話をすることもなく、次に顔を合わせるのはまた一週間後だ。
自分にそう言い聞かせて、私は深呼吸をした。
気合いを入れて、壁から背を起こした時……。
「なにやってんだ。早く入れよ」
「ひゃっ!」
まるで無防備だった私は、飛び上がりそうになって、大きく肩を震わせてしまった。
勢いよく顔を上げると、むしろ私の反応に驚いた様子で、びっくり眼の穂高君が立っていた。
私はあえて会議開始ギリギリになってから、中会議室に向かった。
エレベーターを二十五階で降り、大小様々の会議室が並ぶ通路を折れ、一番奥まったところにある中会議室。
まだ始まっていないからか、大きくドアが開け放たれているのが見える。
近付くにつれて、私の歩みはさらにのろのろとしたものになる。
会議室に入る前に、私は一度足を止めた。
そっと顔を覗かせ、中を窺う。
ここからじゃ、室内全体は視界に入らない。
穂高君がもう来ているかどうか、確認できない。
……いや、なにを探ってるんだろう。
私は一度ドア口から離れ、会議室の壁に背を預けた。
私は時間ギリギリに来たのだから、彼は中にいるに決まってる。
私が入れば、会議はすぐに始まる。
終わった後も急いでオフィスに戻れば、きっと会話をすることもなく、次に顔を合わせるのはまた一週間後だ。
自分にそう言い聞かせて、私は深呼吸をした。
気合いを入れて、壁から背を起こした時……。
「なにやってんだ。早く入れよ」
「ひゃっ!」
まるで無防備だった私は、飛び上がりそうになって、大きく肩を震わせてしまった。
勢いよく顔を上げると、むしろ私の反応に驚いた様子で、びっくり眼の穂高君が立っていた。