無愛想な同期の甘やかな恋情
穂高君が、販売コーナーにあるのと同型の四角いミラーを、私の前に移動させてくれる。
私はミラーを覗き込み、丁寧に紅を唇にのせた。
穂高君は、真剣な瞳を、私の横顔に向けてくる。
彼に唇を見られているのがわかるから、ちょっと居心地悪くてくすぐったい。
でも、これは仕事。
私は気を引き締めて、緊張を抑えながら、彼の方を向いた。
「ど、どう?」
穂高君がわずかに目を伏せ、その視線をまっすぐ私の唇に注ぐ。
瞬きすらせず、じーっと観察した後。
「冴島には、あまり合わないな」
表情も変えずに、そんな感想を口にした。
「私に、じゃなくて」
一瞬鼓動が跳ね上がってしまったけれど、今大事なのは私に合うか合わないかではない。
もちろん穂高君もわかっているから、「ああ」と軽く相槌を打った。
「お前、色白でもともと唇の発色もいいから。これだと逆に色味を抑えてもったいない感じになるけど、平均的なオークル肌の女性なら、合わないことはない」
自分でそう分析しながら、ページを開いたレポート用紙に、さらさらとペンで書き込んでいく。
そんな穂高君を横目でチラッと観察して、私はなぜだかドキドキしてしまう。
そんな自分を誤魔化しながら、リップブラシをティッシュで拭い、左から二番目の紅を取った。
無言でいるのが気まずくて、「でもさ」とわずかに上擦った声で切り出す。
私はミラーを覗き込み、丁寧に紅を唇にのせた。
穂高君は、真剣な瞳を、私の横顔に向けてくる。
彼に唇を見られているのがわかるから、ちょっと居心地悪くてくすぐったい。
でも、これは仕事。
私は気を引き締めて、緊張を抑えながら、彼の方を向いた。
「ど、どう?」
穂高君がわずかに目を伏せ、その視線をまっすぐ私の唇に注ぐ。
瞬きすらせず、じーっと観察した後。
「冴島には、あまり合わないな」
表情も変えずに、そんな感想を口にした。
「私に、じゃなくて」
一瞬鼓動が跳ね上がってしまったけれど、今大事なのは私に合うか合わないかではない。
もちろん穂高君もわかっているから、「ああ」と軽く相槌を打った。
「お前、色白でもともと唇の発色もいいから。これだと逆に色味を抑えてもったいない感じになるけど、平均的なオークル肌の女性なら、合わないことはない」
自分でそう分析しながら、ページを開いたレポート用紙に、さらさらとペンで書き込んでいく。
そんな穂高君を横目でチラッと観察して、私はなぜだかドキドキしてしまう。
そんな自分を誤魔化しながら、リップブラシをティッシュで拭い、左から二番目の紅を取った。
無言でいるのが気まずくて、「でもさ」とわずかに上擦った声で切り出す。