無愛想な同期の甘やかな恋情
穂高君が、凛とした声で遮って、いきなり私の顎をグッと掴んだ。
顔の向きを強引に変えられ、彼と真正面から向き合う位置で固定される。
瞳の奥まで射貫かれるような至近距離に、私はひゅっと音を立てて息をのんだ。


「俺が、取ってやる」


穂高君は表情一つ変えずにそう言って、私の方に身を乗り出してきた。
私は、彼の薄い唇が言葉の形に動くのを目で追った。
でも、彼が言ったことを、瞬時に理解できず――。


「うっ、ん、んっ……!」


聞き返す準備すらできないまま、噛みつくようにして唇を塞がれた。
穂高君は、私がたった今塗ったばかりの口紅を落とそうとしているのか、小さく出した舌先で私の唇を舐める。
彼の舌の動きが、唇からやけにリアルに伝わってきて、私の背筋を、戦慄に近いゾクゾクとした痺れが駆け抜ける。


「んっ、やっ」


反射的に声を出したせいで、わずかに唇が開いた。
穂高君はそれを見逃さず、私の唇を舌先で強引に割ってくる。


「っ、んっ……!」


逃げ場を失い、喉の奥で縮こまった私の舌を、穂高君のそれが追い詰め、あっさりと搦め取った。
信じられないほど巧みな動きに翻弄されて、私はもうされるがまま。


「ふ、あ、んっ……」


唇を閉じることができず、お互いの舌が絡み合って溢れる唾液を飲み込めない。
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