無愛想な同期の甘やかな恋情
口角から零れ、喉に伝う感覚にも、私は身を震わせてしまう。


そんな濃厚なキスを、どれくらいの間交わしていたのか。
穂高君がハッと浅い息を吐いて唇を離した時、私は完全に全身脱力していた。
丸椅子に座ったまま、ぐったりと前に倒れ込む私を、彼が胸で受け止め、ぎゅうっと抱きしめる。


「っ……な、んで」


なにをされたのか、今、どういう状況なのかは、もちろんちゃんとわかっている。
突然すぎる強引な行為の説明を求めたくて、私は無意識にそう呟いていた。
穂高君がゴクッと唾を飲んだ音が、私のすぐ耳元で聞こえた。


「まだ、理由を聞く?」


短く、問い返される。


「なかったことにしようなんて、姑息なことするからだよ。……俺は、好きでもない女に、キスなんかしない」


絞り出すように告げられた言葉に、私の胸がドクッと跳ねて反応した。


「お前が好きだから。キスした理由、それ以外になにがあるって言うんだ」


私は呆然としながらも、『お前が好きだから』という言葉に、びくんと身を竦めてしまう。


「な、んで。嘘……」


信じられない、という気持ちが先に立ち、反射的に呟いた私に、


「なんで嘘だよ」


穂高君が、吐き出すように言った。


「冴島、俺は……」

「っ……嫌、離してっ」
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