無愛想な同期の甘やかな恋情
始業にはまだ早いこの時間、暑さはなく、屋外の空気はむしろ心地よい。


「うわあ、ラボにはこんな場所があるんだね」


この別棟は塀で囲まれているから、一階でも通りの通行人の目もない。
私がちょっとはしゃいだ声をあげると、彼はふっと目を細めた。


「都会の、オアシス」

「え?」

「ちょっとしたガーデニングもできる、癒しの空間。研究に詰まって、脳がタール状になってきたら、ここで息抜きをする。ちょっと、いいだろ?」

「脳がタール状って」


理系人間の穂高君らしい表現に、私はついつい吹き出してしまった。


「大変、大変! ちゃんと朝ご飯食べて、脳に糖質を補ってもらわなきゃ」


私は彼との間の一人分の隙間に、コンビニのビニール袋を置いた。
穂高君の嗜好はよく知らないから、いくつか買ってきた中から、選んでもらおうと思っていた。
まずは、コーヒーのパックを両手に持ち、顔の高さに掲げて、彼に見せる。


「コーヒー。ミルクと砂糖入りか、ブラック。どっち?」

「じゃ、ブラック」


これは予想通りだったな、と思いながら、無糖の方を彼に渡した。


「コールスローサラダと、ポテトとハムのサラダ」

「ポテトの方、もらっていい?」


そう言って、穂高君が私の手からスッと指で摘まみ上げる。
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