無愛想な同期の甘やかな恋情
「リ、リリカルって」

「メルヘンチック、って言った方がいいか?」


穂高君は意地悪に眉尻を上げて、そう言い直した。


「わ、笑いたいなら、笑ってくれていい」


私はプイと顔を背けて、握ってしまっていたおにぎりに視線を落とした。
この場を繕うように、無駄に音を立ててセロファンを剥がす。
海苔を巻いたおにぎりの角を、かぷっと咥えると……。


「笑わないけど」


穂高君が、短く返してきた。
私は、パリッと音を立てて一口齧り、そのまま唇を結ぶ。


「そういうことだったら、やっぱり俺は、お前のこと諦めない」

「っ、え?」


彼の言葉が予想外で、口にしたおにぎりを咀嚼しないまま、ゴクッと飲み下してしまった。
喉に引っかかり、ゴホゴホと咳き込んで、慌ててコーヒーのパックにストローを刺す。
ゴクゴクと喉に流してから、ようやくほおっと息を吐くと。


「な、なにを……」


噎せる私をジッと観察していた穂高君に、涙目を向けた。


「冴島の夢を叶えた魔法使いは、間中さんかもしれないけど。魔法のアイテムを創り出して、この世に送り出すっていうお前の夢を、俺は今よりもっと膨らませて、大きくしてやれる」
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